投稿日:2026.04.15 最終更新日:2026.04.15
うつ病の障害年金、働きながら受給できる?審査で見られる就労の中身と等級の目安
「働けているから、私は支援の対象じゃない」と思っていませんか?
うつ病と診断され、出口の見えない辛さを抱えながらも、「休職するほどではない」「仕事に行けているうちは我慢すべきだ」と自分を律している方は少なくありません。
しかし、「働いている=支援が受けられない」というのは大きな誤解です。
実は、仕事を続けながらでも利用できる経済的なサポートや、負担を軽減する制度はいくつも存在します。
この記事では、就労中の方が抱きやすい疑問や不安に寄り添いながら、あなたをサポートしてくれる障害年金支援の仕組みを分かりやすく解説します。
- 就労中でも障害年金を受け取れる理由と制度的な根拠
- うつ病の等級(1〜3級)と、どんな状態が対象になるか
- 審査で実際に何が確認されるのか(6つの観点)
- 「給与がある」「配慮を受けている」場合の審査での扱い
西田 真琴【社会保険労務士法人きんか代表】
【保有資格】特定社会保険労務士
岐阜県で長年の企業労務経験と傾聴力を活かし、病気や障害を抱える方の不安に寄り添います。お話を親身に伺い、ご希望に沿った最善の道筋を一緒に見つけます。
目次
うつ病で働きながらでも、障害年金は受給できます

まず、知っておいていただきたのは働きながらでも、障害年金を受け取ることはできます。
障害年金の受給要件は、「初診日」「障害の状態(等級に該当するかどうか)」「保険料の納付要件」の3つです。
就労しているかどうかは、この要件に一切含まれていません。
審査で見られるのは、病名でも就労の有無でもありません。
日常生活や就労にどれくらい支障が出ているかの「程度」です。
うつ病で就労中の方が該当しやすいのは、2級または3級です。それぞれの目安を確認しておきましょう。
| 等級 | 症状の目安 | 就労への制限 |
|---|---|---|
| 1級 | ほぼ日常生活ができない状態 | 就労は基本的に困難な状態 |
| 2級 | 日常生活に著しい支障がある状態 | 一人での就労が著しく困難(時短・頻繁な欠勤など) |
| 3級(厚生年金のみ) | 就労が著しく制限される状態 | 特別な配慮なしに通常どおり働くことが困難 |
特に3級の「特別な配慮なしに通常どおり働くことが困難」という基準は、就労継続中の方にも当てはまります。
なお、3級は厚生年金に加入していた方のみ対象となります。
受給の3つの要件について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
うつ病でも障害年金は受け取れます|受給条件と申請方法を専門家が優しく解説
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就労していても、審査で不利になるわけではありません。見られるのは就労の「中身」

「働いていると審査で不利になる」という話を、耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
その不安は、よくわかります。
ですが、実際には、「就労しているだけで受給できないわけではない。就労中の方は、その働き方の実態が丁寧に確認される」というのが、制度の正しい姿です。
認定基準も等級判定ガイドラインも、一貫してこう示しています。
「働いている事実だけで症状が軽いとは言えない。就労の中身を見て、日常生活の状況を判断する」。
では、具体的に何が確認されるのでしょうか。
欠勤・配慮・帰宅後の生活まで。審査で確認される6つの観点
日本年金機構の障害年金の認定基準と等級判定ガイドラインには、就労中の方の審査で確認される観点が具体的に示されています。
「働いている」という事実よりも、「その背景にある状態」を見る。それが制度の考え方です。
確認される観点は、主に以下の6つです。
- 勤務時間の制限:フルタイムか、時短・パートタイムか
- 業務内容の制限や軽減:担当業務が変更・縮小されているか
- 欠勤・早退・遅刻の頻度:出勤状況に影響が出ているか
- 職場の特別な配慮・支援:通常とは異なる措置を受けているか
- 同僚・上司からのサポートの程度:業務を補助してもらっているか
- 仕事以外の日常生活への影響:帰宅後・休日に生活が崩れていないか
これらのうち複数に当てはまる状況があれば、就労しながらでも受給できる可能性があります。
審査で確認されるのは「あなたが働けているかどうか」ではなく、「その仕事をするために、どれだけ無理をしているか」という点です。
今のあなたの状況でなぜ働けているのか、その背景まで見てくれるのです。
なお、診断書(精神の障害用)には、仕事場での援助状況や意思疎通の困難さを記載する欄が設けられています。
厚生労働省の令和7年度集計では、民間企業で働く精神障害のある方は168,542人と、前年比11.8%増加しています。
うつ病をはじめとする精神疾患を抱えながら就労しているのは、あなただけではありません。
同じような状況で申請し、受給している方も数多くいらっしゃいます。
「働いているから障害年金を受給してはいけない」ということは一切ないのです。
フルタイム・時短・障害者雇用で、審査の見られ方はどう違う?
ただし就労形態によっては、審査での扱いで違いがあります。
ご自身の状況に近いものを、参考にしてみてください。
| 就労形態 | 審査での傾向 |
|---|---|
| フルタイム勤務(一般雇用) | 就労実態がより詳しく確認される。配慮・欠勤・業務制限の実態があれば、受給できるケースは少なくない |
| 時短・パートタイム | フルタイムよりも受給しやすい傾向がある。ただし時短だからといって自動的に有利になるわけではない |
| 障害者雇用枠 | 特別な配慮のもとで就労していることが審査上明確になる。等級判定ガイドラインでは「障害者雇用制度による就労は1級または2級の可能性も検討する」と明記されている |
出典:厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン」
うつ病で就労中の人が抱えやすい2つの誤解

受給できるとわかっても、まだこんな不安が頭から離れない方もいらっしゃるでしょう。
「給与をもらっているから対象外では?」「配慮してもらっていると不利では?」。
どちらも、よく聞かれる誤解です。
給与があったら対象外?いいえ、対象外にはなりません
「収入があるから対象外では」と感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、これは誤解です。
障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)には、所得制限はありません。
給与を受け取りながら障害年金を受給している方は、実際に多くいらっしゃいます。
「でも、在職中は年金が減額されると聞いたことがある」こういった疑問もよくお聞きします。
それは老齢年金(老齢厚生年金)の「在職老齢年金制度」のことで、障害年金とは別の制度です。
混同されやすいのですが、仕組みはまったく異なります。
一点だけ補足しておくと、20歳になる前に初診日がある場合は、前年の所得が一定額を超えると支給が制限されることがあります。ただし、これは就労中の多くの方には当てはまらないケースです。
給与があるからといって、諦める必要はありません。
職場に配慮されているから受給しにくくなる?いいえ、そのようなことはありません
「職場に配慮してもらっているということは、仕事ができているということ。審査で不利に見られるのでは」そう感じている方もいらっしゃるでしょう。
実は、逆です。
日本年金機構の等級判定ガイドラインには、こう書かれています。
「援助・配慮が常態化している環境で安定就労できていても、その援助がない場合に予想される状態を考慮する」
つまり、職場の配慮があってはじめて就労できている状態は、「その配慮なしでは働けない」という実態の証拠として審査に反映される可能性があるのです。
ガイドラインはさらに「障害者雇用制度による就労は、1級または2級の可能性も検討する」とも明記しています。
診断書にも、雇用体系(障害者雇用か一般雇用か)や仕事場での援助状況を記入する欄があります。
配慮は審査にとって「見たい情報」として、制度の設計に組み込まれているのです。
ただし、こうした実態を書類で伝えることは、実は簡単ではありません。
書き方によっては、就労の実態が審査に伝わらないこともあります。
書類の書き方に不安があるときは、専門家に相談してみてください。
受給後も働き続けて大丈夫です。更新審査で気をつけたいこと

「受給が始まったら、仕事を続けていると止められてしまうの?」と不安に思う方もいらっしゃいます。
ご安心ください。障害年金には定期的な「更新」(有期認定)という仕組みがありますが、これは現在の障害の状態を医学的に確認するためのものです。
「就労しているから止める」という仕組みではありません。更新の詳しい流れや手続きについては、別の記事で解説しています。
就労を続けながら注意したい状況変化は、主に以下の3点です。
- フルタイム勤務に戻るなど、就労状況が大きく変化した場合
- 職場の特別な配慮・業務制限がなくなり、以前より通常に近い勤務ができるようになった場合
- 欠勤・早退の頻度が大幅に減り、日常生活が改善した場合
そうした変化が出てきたら、更新の前に主治医に話しておきましょう。
就労状況が変わっていれば、書類に反映する内容も変わります。変化が生じたときは、一人で抱え込まず、まず主治医に相談するところから始めてみてください。
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よくある質問

Q 障害者手帳を持っていなくても、申請できますか?
A.はい、申請できます。
障害者手帳と障害年金は、まったく別の制度です。
「手帳がないから無理かな」と思っていた方でも問題なく申請することができます。手帳の有無は、障害年金の申請要件には関係ありません。
初診日・障害の状態・保険料の納付という3つの要件を満たしていれば、手帳がなくても申請できます。
Q 申請したことは、職場に知らされますか?
A.知らされることはありません。
「会社にバレたら困る」と心配される方は多いのですが、障害年金の申請は日本年金機構への手続きです。
勤務先に情報が伝わる仕組みにはなっていないので、自分から話さない限り、職場が知ることはありませんのでご安心ください。
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Q 申請してから、受給が始まるまでどのくらいかかりますか?
A.おおよそ3〜6か月程度が目安です。
書類の内容や審査の状況によって前後することもありますが、半年以内には結果が出ることが多いです。
結果が出るまでの間は、主治医との定期的なやり取りや、体調・日常生活の記録を続けておくとよいでしょう。それが後々、状態を正確に伝えるための大切な材料になります。
まとめ:うつ病で働きながら障害年金を受け取れるかどうか、今の状態を整理しよう
うつ病で就労中の方が、障害年金を諦める必要はありません。就労の有無は受給要件には含まれておらず、審査で見られるのは「どのように働いているか」「日常生活にどれだけ支障が出ているか」です。
- 就労の有無は障害年金の受給要件ではない
- うつ病は1〜3級で判定(3級は厚生年金加入者のみ対象)
- 欠勤・職場配慮・帰宅後の状態など6つの就労実態が審査で確認される
- 給与や職場の配慮は受給の障壁にならない
「就労できているから対象外だろう」と思い込んでいた方が、この記事を読んで少しでも不安が和らいでいたら嬉しいです。
帰宅後は何もできない、週に何日も欠勤している、配慮なしには続けられない。そうした日々の大変さを、制度はきちんと見てくれます。だからこそ、その実態を書類でどう伝えるかが、審査の結果に関わってきます。
障害年金は、あなたが安心して治療に専念し、生活を立て直すために国が用意した正当な権利です。その権利を「働いているから無理だ」という思い込みで諦めてしまうのは、あまりにもったいないことです。
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一人で悩まず、まずはあなたの今の状況を聞かせてください。どんな働き方をしているか、通院はどのくらいか。そこから一緒に整理していきましょう。
この記事を書いた人
西田 真琴【社会保険労務士法人きんか代表】
【保有資格】特定社会保険労務士 岐阜県で長年の企業労務経験と傾聴力を活かし、病気や障害を抱える方の不安に寄り添います。お話を親身に伺い、ご希望に沿った最善の道筋を一緒に見つけます。
