投稿日:2026.03.26 最終更新日:2026.03.26
うつ病の障害年金、自分で申請できる?一人で抱え込まず受給するための選択肢
うつ病で障害年金を自分で申請したいけれど、「本当に自分にできるのか」と不安を感じている方も多いでしょう。
「専門家に頼むと数十万円かかると聞いて、できれば費用を節約したい。でも、書類を揃えられるか、何度も窓口に行けるか……失敗したらどうしよう」
その不安は、もっともです。
うつ病でも障害年金は自分で申請できます。初診日の証明・書類の準備・申立書の作成を一人でこなした方もいます。ただ、向き不向きがあるのも確かで、体調の波が激しいなかで進めると途中で止まってしまうケースも少なくありません。
この記事では、自力申請で気をつけたいポイントと、どちらの進め方が自分に合っているかの判断材料を、正直にお伝えします。
- 障害年金を受け取るための3つの条件
- 自力申請が向いているケース・向いていないケースの判断軸
- 自力申請の3つの注意点と打開策
- 申請から受給までの流れ
西田 真琴【社会保険労務士法人きんか代表】
【保有資格】特定社会保険労務士
岐阜県で長年の企業労務経験と傾聴力を活かし、病気や障害を抱える方の不安に寄り添います。お話を親身に伺い、ご希望に沿った最善の道筋を一緒に見つけます。
目次
障害年金は自分で申請できます。受け取るための3つの条件

うつ病でも障害年金はご自身で申請できます。受け取るには、3つの条件があります。難しく聞こえるかもしれませんが、一つずつ確認していきましょう。
- 初診日が国民年金・厚生年金の加入期間中にあること
- 保険料の納付要件を満たしていること
- 日常生活や仕事に支障が出ていること
初診日が国民年金・厚生年金の加入期間中にあること
初診日とは、うつ病で初めて病院やクリニックを受診した日のことです。転医していても「一番最初の受診日」が初診日になります。
大切なのは、その日に年金に加入していることです。
- 会社員として働いていた時期に受診した場合→ 厚生年金
- 自営業(個人事業主)の時期に受診した場合→ 国民年金
この初診日を証明する書類があって、はじめて申請が進みます。
3つの条件の中でも、特に注意が必要な部分です。
診察券やお薬手帳など、当時の記録は大切に保管しておいてください。病院のカルテには5年という保存期間があるため、それ以上前の受診だと記録が残っていないこともあります。
保険料の納付要件を満たしていること
条件の目安としては、初診日までの期間のうち、保険料を納めた期間(または免除された期間)が3分の2以上あれば大丈夫です。
もう一つ、初診日の前々月までの1年間に未納がなければ、この条件をクリアできる特例もあります(令和18年3月末まで)。
会社員であれば、給与から自動的に引かれているためほとんどの方は問題ありません。20歳前にうつ病を発症した場合は、年金制度への加入前なので、保険料の納付要件は問われません。
日常生活や仕事に支障が出ていること
病名だけでは障害年金の等級は決まりません。等級は、日々の生活でどれだけ困難を抱えているかで判断されます。
うつ病の方に多い「困りごと」の具体例です。
- 朝起き上がれない・布団から出られない
- 着替えや身支度に時間がかかる
- 外出すると疲れ果てて帰宅後は動けない
- 人との会話が極端に疲れる・電話に出られない
- 料理・掃除などの家事が手につかない
「日常生活が著しく制限される状態」であれば障害基礎年金2級、「働くことが著しく制限される状態」であれば障害厚生年金3級の目安です。診断書や申立書で「どう困っているか」を具体的に伝えることが、とても大切になります。
うつ病でも障害年金は受け取れます|受給条件と申請方法を専門家が優しく解説
うつ病で働けなくて、生活や将来のことを考えると、胸が苦しくなる…。 朝、起き上がることさえつらい日もあって、このままでは生活費も底をついてしまう…。 障害年金という制度があるのは知っているけれど、「うつ病の自分なんかが対象になるんだろうか」「身体の障害じゃないのにもらえるの?」と、不安に思われて
自力申請が向いているか、最初に確認しておきましょう
詳しい申請の手順に入る前に、自力申請が現実的かどうかを整理しておきましょう。同じうつ病でも、状況によって進めやすさはかなり変わります。
自力でも進めやすいケース
- 初診の病院が今も受診中か、5年以内に受診していてカルテが残っている
- 体調の波はあるが、書類作業をこなせる時間帯が週に数回ある
- 家族など、一緒に動いてくれる人が近くにいる
- 通院歴が比較的まとまっていて、時系列が追いやすい
早めにサポートを求めた方がいいケース
- 10年以上前の初診で、当時の病院が閉院しているか記録が残っていない
- 外出そのものが難しい、書類を目にするだけで消耗する
- 医師に日常の状況をうまく伝えられない、または診察時間がほとんどない
- 一人暮らしで、手伝いを頼める人がいない
どちらとも言えない、という方もいます。判断に迷う場合は、年金事務所や社労士に状況だけ伝えて、意見を聞いてみるのも一つの方法です。
自力申請でつまずきやすい3つのポイントと対処法

自力申請で特に重要なのは、以下の3つのポイントです。
- 初診日を証明する書類の準備
- 医師への日常生活の困りごとの伝え方
- 病歴申立書の書き方
実務経験から、具体的なポイントをお伝えします。
初診日を証明する「受診状況等証明書」をどう揃えるか
初診時に受診した医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらう必要があります。
カルテの保存期間は5年のため、それ以上前の初診だと記録が破棄されている可能性があります。病院が閉院していて証明書が取れないケースもあります。診察券・お薬手帳・第三者証明などで代わりに証明する方法もありますが、難易度は上がります。
まず確認してほしいのは、当時の診察券やお薬手帳が手元にあるかどうかです。それがあれば、初診日を証明できる可能性が大きく上がります。心当たりのある方は、年金事務所に相談する前に一度探してみてください。
医師に「日常生活の困りごと」をどう伝えるか
診断書は、審査の結果を直接左右する最重要書類です。
うつ病の症状として、気力・意欲・集中力が低下しています。そのため、限られた診察時間の中で「日々どれだけ困っているか」を医師に伝え切れない方が多いのです。制度が求めるのは「支援がなければどう困るか」という実態です。今できていることではなく、その困難を言葉にする必要があります。
事前にメモを作っておくと、医師への伝わり方が変わります。「起き上がれない日が週に何日あるか」「家族がいなかったら食事をとれるか」など、具体的な状況を箇条書きにして診察に持参するだけで十分です。
10年以上の病歴を時系列で書き出す「申立書」の難しさ
「申立書」は、多くの方が一番つらいと感じる書類です。発病から現在までの経過や就労状況を時系列で整理する必要があり、記憶が曖昧な方には大変な作業です。
申立書の内容は診断書と照らし合わせて審査されます。両方の書類で同じ「困りごと」が一貫して伝わることが大切です。どちらかが実態と食い違うと、説明の筋が崩れてしまいます。
完璧に書き上げようとするのではなく、まず思い出せる範囲で箇条書きにするところから始めると、気持ちが楽になります。家族に記憶を補ってもらうことも認められており、年金事務所でも相談しながら進められます。
【実際の流れ】申請から受給までのステップ
自分で申請する場合、大きく9つのステップで進めます。
- 年金事務所に相談(初回)
- 初診日を証明する受診状況等証明書を取得(数日〜数週間)
- 診断書を医師に依頼(1〜2ヶ月)
- 病歴・就労状況等申立書を作成
- 年金請求書などの必要書類を準備
- 年金事務所に提出
- 審査(3〜4ヶ月)
- 結果通知
- 受給開始(認定から1〜2ヶ月後、偶数月15日に振込)
準備から受給まで、半年から1年程度かかります。書類に不備があると何度もやり直しになるため、各ステップで確認を怠らないようにしてください。
自力申請で負担になりやすい3つの場面

うつ病で体調が不安定な方にとって、想像以上に負担がかかる場面があります。3つに絞ってお伝えします。
- 窓口には、複数回足を運ぶ必要があります
- 書類の量が多く、準備に時間がかかります
- 審査では、書類の内容が以前より重要になっています
窓口には、複数回足を運ぶ必要があります
年金事務所は予約制が前提で、当日の急な来所には対応できないことがほとんどです。手続きの所要時間は1回60分が目安で、ある程度の集中力と説明力が求められます。担当者によって説明内容にばらつきがあり、書類の不備で再度来所を求められることもあります。
外出が難しい場合は、まず電話で問い合わせをしてみてください。「何を持っていけばいいか」を先に確認するだけで、無駄な往復が減ります。電話でのやり取りが難しければ、家族に代わってもらうことも方法の一つです。
書類の量が多く、準備に時間がかかります
必要書類は診断書・申立書・受診状況等証明書・年金請求書など多岐にわたります。生活や就労の変化を時系列でまとめる作業は、想像以上に負担がかかります。
一日でまとめようとすると、体調が悪化して長期間手が止まることがあります。週に30分だけ手をつけるなど、細切れで進める方が結果的に早く完成することも多いです。途中まで書いた状態でも、年金事務所で相談すると修正のアドバイスをもらえます。
審査では、書類の内容が以前より重要になっています
令和6年度の統計によれば、精神障害の新規申請のうち「支給されなかった」割合は、障害基礎年金で13.9%、障害厚生年金で6.5%でした。令和5年度は障害基礎年金で7.1%でしたので、わずか1年で約2倍に増えています。
書類の精度が審査結果に影響しやすくなっており、診断書の内容が実態を正確に反映していることが以前よりも重要になっています。
不支給になった場合でも、3ヶ月以内に審査請求という手続きがあります。1回の結果がすべてではありませんが、書類の内容を整え直さずに再申請しても同じ結果になりやすいため、不支給の通知が届いたら「どこが足りなかったのか」を確認することが大切です。
出典:令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書(日本年金機構)
行き詰まったときは、途中から相談しても大丈夫です
自力で進めていても、「初診日の証明書が取れない」「申立書が書けない」「体調が悪化して手が止まった」といった場面で詰まることがあります。そういうときは、一人で抱え込まないことが大切です。
まずは年金事務所に相談し、今ある資料でどこまで進められるか確認してみてください。家族に同席や書類整理を手伝ってもらうだけでも、負担が軽くなることがあります。
それでも進めるのが難しい場合は、社会保険労務士に相談する方法もあります。書類の準備や申立書の作成、窓口への提出まで代わりに進めてもらえます。体調が安定しない方には、現実的な方法の一つです。費用は受給できた場合の報酬制が多く、受給できなければ費用がかからないケースもあります。
社会保険労務士法人きんかでは、岐阜・愛知での対面相談のほか、電話やZoomでの相談にも対応しています。「今の状況を話してみたい」という段階でも、ご相談ください。
よくある質問
申請書類は、どこで手に入りますか?
年金事務所の窓口でもらえます。日本年金機構のウェブサイトからダウンロードできる書類もあります。ただし、診断書は医療機関に書いてもらうもの、受診状況等証明書は初診の病院に記載してもらうものなど、書類によって入手先が違います。「何をどこに頼めばいいか分からない」という場合は、年金事務所か社労士に聞いてみてください。
最初に受診したのが精神科ではなく内科だった場合、初診日はどうなりますか?
内科を受診した日が初診日になります。「精神科に初めて行った日」ではなく、「うつ病に関連する症状で最初に受診した日」が基準です。内科での受診記録が残っていれば、その日を初診日として証明できます。当時の記録が取れるかどうかが鍵になるので、心当たりのある方は早めに確認してみてください。
申請の途中で体調が悪化してしまったら、どうなりますか?
手続きは止まります。自力申請の場合、体調が崩れると書類の準備や窓口への連絡が難しくなり、そのまま手続きが進まなくなることがあります。社労士に依頼していれば、本人が動けない状況でも続けてもらえます。体調に波があるからこそ、早めに任せておくと安心です。
自分で申請して不支給になると、次の申請に不利になりますか?
直接不利になるわけではありません。ただ、書類の内容を整え直さずに再申請しても、同じ結果になりやすいのは確かです。不支給の通知が届いたら、「どこが足りなかったのか」を確認しながら社労士に相談してみてください。
まとめ:うつ病でも、自分で申請できます
うつ病でも、障害年金は自分で申請できます。ただし、体調や通院歴の状況によっては、自力より専門家のサポートを使った方が進めやすいこともあります。
- 受給には初診日・保険料納付・生活への支障の3条件がある
- 初診の記録が残っている、書類作業をこなせる時間がある場合は自力でも進めやすい
- 初診日の証明・診断書・申立書の3点が、自力申請でつまずきやすい場所
- つまずいても、相談しながら進めることができる
大切なのは、「自分でやるか、頼るか」を最初から決め切ることではありません。最初にすることは一つだけです。当時の診察券やお薬手帳が手元にあるか、確認してみてください。それがあれば、次に何をすべきかが見えてきます。
やってみて難しいと感じた時点で、相談窓口や専門家に頼っても遅くありません。
傷病手当金が終わった後の流れや、障害年金との切り替えタイミングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
傷病手当金の期限が迫るあなたへ。終わった後に頼れる「障害年金」の基礎知識
うつ病で休職し、傷病手当金を受給しながら療養を続けてきた方で、「もうすぐ1年6ヶ月の期限が来る」という現実を意識し始めている方もいるかと思います。 まだ復職できる状態ではないのに、収入がなくなる。治療費も生活費もかかるのに、支えがなくなっていく。そのことを考えると、頭が真っ白になるかもしれません。
この記事を書いた人
西田 真琴【社会保険労務士法人きんか代表】
【保有資格】特定社会保険労務士 岐阜県で長年の企業労務経験と傾聴力を活かし、病気や障害を抱える方の不安に寄り添います。お話を親身に伺い、ご希望に沿った最善の道筋を一緒に見つけます。
